獣医師国家試験に不合格 落ちた人はどうなる?

獣医師国家試験に不合格 落ちた人はどうなる?

獣医師国家試験に不合格 落ちた人はどうなる?

獣医師になるための獣医師国家試験に合格すると、獣医師免許が与えられ、毎年約1000人弱の獣医師が誕生しています。しかし、もちろん獣医師国家試験に不合格の人も毎年います。試験に落ちるとどうなるのでしょうか?1年国試浪人した経験談に基づく落ちた時に対応すべきこと、勉強法のアドバイスも掲載しています。

獣医師になるには獣医師国家試験に合格が必須

獣医師になるには、6年生の獣医学科を卒業(または卒業見込み)した後、農林水産省が定める獣医師国家試験に合格しなければなりません。しかし、残念ながら全員が合格する試験ではなく、毎年不合格者が出ています。

2024年度「第76回獣医師国家試験」は、2025年2月12日13日に北海道、東京、福岡の試験地で実施されました。3月12日に農林水産省HPにて合格発表の予定です。

2023年度「第75回獣医師国家試験」は、2024年2月14日15日に北海道、東京、福岡の試験地で実施され、2024年3月13日に合格発表がありました。受験者数1,394人に対し、合格者は1,013人、合格率は72.7%という結果となりました。第74回獣医師国家試験の過去最低合格率69.9%より持ち直したかたちです。

第75回の内訳としては、
新卒受験者1,029人に対し、868人が合格、合格率は84.4%
既卒受験者348人に対し、137人が合格、合格率は39.4%
毎年、新卒の方が合格率が高くなるという特徴があります。

第76回については結果が公表され次第お伝えします。

年に1回実施される獣医師国家試験に不合格となると、獣医学科の大学を卒業しても「獣医師」の免許は取得できません。つまり、不合格になると最短でも1年後の試験までは獣医師になれないのです。

参照)
第75回獣医師国家試験(令和4年度)の結果について
獣医師国家試験

獣医師国家試験の大学別の合格率

大学別の獣医師国家試験の合格率ランキングは以下の記事で詳しく解説しています。

【大学別】獣医師国家試験の合格率ランキング

獣医師国家試験の合格率は大学によって異なります。第75回獣医師国家試験で9割を超える合格率だったのは以下の大学です。

北海道大学 92.5%
東京農工大学 90.2%
岐阜大学 96.6%
鳥取大学 97.1%
宮崎大学 92.6%

その他の大学の合格率は以下の通りです。

帯広畜産大学  84.2%
岩手大学 85.7%
東京大学 60.9%
山口大学 81.5%
鹿児島大学 87.5%
大阪公立大学 80.5%
酪農学園大学 85.6%
北里大学 88.9%
日本獣医生命科学大学 88.5%
日本大学 86.0%
麻布大学 82.9%
岡山理科大学 67.5%

例年の大学別合格率をみても、大学受験時に偏差値が高い獣医大学が、獣医師国家試験の合格率が高いかというと、必ずしも相関性はないようです。国立大学はそもそもの生徒数が少ないため、年度によって合格率の変動が大きい傾向にあります。

学科の特性上、大学受験時に獣医師国家試験の合格率をみて志望校を選ぶ学生も少なくないため、大学別合格率を重要視している大学も多いです。

参照)
獣医師国家試験の結果(大学別)
獣医師国家試験
【大学別】獣医師国家試験の合格率ランキング

獣医師国家試験に不合格 落ちた人は国試浪人に

獣医師国家試験は不合格となる場合もあることがおわかりいただけたと思います。では、獣医師国家試験に不合格になったらどうなるのでしょうか。落ちた人はどうするのか、気になりますよね。

獣医師国家試験に落ちた場合、前述した通り翌年の試験まで獣医師になれないため、大学を卒業しても、獣医師業務を行うことはできません。

就職が決まっている場合、獣医師試験に落ちたこと、つまり獣医師として働けなくなってしまったことを内定先にお伝えしなければなりません。内定先によっては、内定取り消しになることもあります。場合によっては、獣医師免許を必要としない業務をお願いしてもらえることもあるかもしれません。

落ちてしまった人は翌年の試験での合格を目指す場合、勉強を続ける必要があります。再度国家試験にチャレンジすることをよく「国試浪人」と呼びます。医師、薬剤師、看護師などでも国家試験に不合格のため国試浪人となり、再度受験することがありますが、獣医師国家試験でも同様です。「既卒合格率」というのが、国試浪人生の合格率です。例年、既卒合格率は低くなる傾向にあり、大変厳しい状況です。やはり、一度落ちた試験の勉強を、仕事しながらまた1年頑張り続けるというのは、メンタル的にも辛くとても大変なことです。

獣医師国家試験に関しては、回数制限はありません。何年以内に合格しなければならないという期間もないため、何度も挑戦することができます。一浪して受験、二浪以上する人もいます。

獣医師国家試験に不合格になった後に対応すべきこと

筆者は実際に獣医師国家試験を受験し不合格になった経験がありますので、落ちたと分かった時の戸惑いは非常に理解できます。不合格が判明してからすぐに動くのは心の整理がつかず難しいかと思いますが、対応しておかなければいけないことがあります。それは、内定先への報連相です。前述のように、獣医師として働けなくなってしまったことを内定先にお伝えしなければなりません。

今後どのようにしたいのか自分で考えたうえで、内定先に不合格を報告、ご迷惑をかけてしまう場合は謝罪をし、何か提案してくださった場合にはどうしていくか相談を重ねていく形になるかと思います。

内定先が動物病院の場合、アルバイト雇用等で資格が必要のない範囲での業務をしながら、現場で勉強できる機会を提供してくださることが他職種より多いように感じます。もちろん内定先の動物病院の状況次第ですので、臨機応変に対応しましょう。

一方、公務員獣医師としての内定だった場合、内定取り消しとなってしまう可能性が高いです。別の業務での採用となるケースはあまり聞いたことがありません。内定取り消しとなった際は、獣医師国家試験だけでなく、公務員試験も再度受験する必要があります。

内定先が一般企業の場合は、業界や職種により様々なケースが考えられます。もともと獣医師資格が必要のない業務での採用ということもありますから、確認が必要です。その場合でも、獣医師資格手当に関係することですし、入社準備を進めていることが多いですので、内定先に報告するべきという点は変わりません。

いずれの場合も早めに報告することが大事です。

報告するにあたって、そもそも獣医師国家試験の再受験をするのか、というところから、いつからどのように勉強するのか、仕事をしながらの場合はどのように両立するのか、考えなければならないことがたくさんあります。
その過程で改めて将来のことについて考えたり、心の整理をつけたり、自分と向き合ったり等、不合格のダメージが大きい分有意義な時間となることもまた事実です。

国試浪人生の勉強方法

国試浪人生はどのような勉強方法がおすすめでしょうか。1年国試浪人した経験談からは、以下の勉強法をおすすめします。
まず、再受験を決意したら、どのように勉強するかという問題が出てきます。現役で不合格になったわけですから、同じように勉強していたらダメだとわかっていても、獣医師国家試験の場合は情報が少なく、どうしたらいいか悩んでしまうかもしれません。

浪人中に仕事をどうするのかで変わってきますが、自力で勉強するのか、予備校に行くのか、大学の聴講生になるのか、どういうスタイルで勉強を進めていくのかが鍵です。
一度不合格になった人は、自力のみの勉強だと難しい傾向にあります。

大学受験と違うのは、合格している人の方が多い試験なので、理論的にはみんなと同じように勉強していれば合格するはずという点です。奇をてらわず、スタンダードな方法で進めていきましょう。今の勉強方法がスタンダードなのかどうかは、周りの受験生がどう勉強しているか等の情報が必要になります。そういう意味でも、1人で勉強することはあまりおすすめできません。

国試浪人をして合格した人は概ね以下の方法で勉強を進めています。

既卒生であれば教材や資料は揃っているので、基本的な方針は、過去問をベースに勉強していくことになります。過去問は5〜10年分を分析するという人が多いです。
問題ひとつひとつの選択肢に関してすべて説明できるようになることを目標にします。
誤答選択肢の何が違うのか、その選択肢から連想される知識を広げていき、それも含めて調べて頭に入れます。
そうすると1問に対していくつもの知識を網羅でき、結果的に効率よく勉強できるでしょう。
画像問題はどれだけ多くの画像を見たかという点も重要かもしれません。

最初は解剖学や生理学から始めて、最終的には内科や外科の臨床系科目を勉強すると体系的に学べるのでおすすめです。

参照)
国試の解答チェックにおすすめ
【2025年最新版掲載!】第76回獣医師国家試験の解答速報

年に一度の獣医師国家試験。十分な勉強をして臨んだとしても不合格になる人もいます。体調不良、寝不足、思わぬ出来事で集中できないまま落ちてしまったという人も。
筆者は1年国試浪人し、2度目の国家試験にて合格しました。臨床や企業を経験しましたが、国試浪人したことがその後働く中で弊害になったと感じたことはありません。苦労した事は2点あります。不合格直後のメンタル面と、不合格が決定した後どうすればいいのか、情報をどう集めたらいいのかという点でした。振り返ると、同じ境遇の同級生や国試浪人経験者を探し、前例を参考にして、自分に合った勉強を続けられる環境を見つけたことが、翌年の合格に繋がったと思っています。
よければ以下の国家試験不合格体験記も参考にしてください。落ちた直後からの様子をまとめています。
【獣医師国家試験不合格体験記】
~国試が不合格だった皆さんへ~
獣医師国家試験の合格は獣医師になるために必須ですが、所詮机上の勉強での能力を測るものです。国試浪人は恥ずかしいものではありません。この試験での成績と、その後の獣医師としての価値は比例しません。何浪かして遂に合格し、立派な獣医師になった人は沢山います。結局、獣医師になっても勉強は続きますから、獣医師を目指すその意志がある限り、是非あきらめないでほしいと思います。

関連ページ

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