獣医学部は忙しいと聞くけど、どのくらい忙しい?なぜ忙しいの?
獣医学部の受験生なら気になる、獣医学部の学生は忙しいのかについて卒業生が解説します。
勉強する事が沢山ある!
獣医学部の授業は、基本的には、卒業後の獣医師国家試験に対応するために、その出題基準に合わせた授業の構成となっています。
(獣医師国家試験出題基準 https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/shiken/pdf/kijyun_20140904.pdf)
大学では、中学や高校より時間の自由度が高く、授業が選択制だから時間割を調整しやすいということをよく耳にします。獣医学部の場合、なかなかそうはいきません。
4年制大学の平均取得単位数は124単位であるのに対し、6年制の獣医学部の場合は、「大学設置基準となる182単位以上を修得することのほか、大学が定める単位数」が卒業条件となっています。さらにそのうち8割〜9割が必修科目です。
そして学年によって学ぶ科目が固定されているため、他文系大学のように、3年生までの間に卒業単位数を取ってしまうということができません。つまり、授業の選択余地がほぼありません。そういった背景もあり、獣医学部は忙しいといわれます。しかし、低学年の間は専門科目の授業や実習は少ないため、拘束時間としては学年によって差があります。
(農林水産省HP「獣医学部ってどんなところ?」 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2109/spe1_01.html)
実習の時間が沢山ある
学年が上がると、実習が増えてきます。
卒業単位数が182単位+α(大学によって異なる)のうち、専門教育科目の平均単位数は147.8単位。そのうち実習科目の平均単位数は31.8単位です。実習科目の単位も必修が多いですから、落とすことはできません。
実験や解剖の他、学外の動物病院や牧場、施設等での実習があり忙しくなります。夏休みの期間を利用しての実習もあり、長期間に及ぶ場合も。終了時刻が決まっていないことも多いので、実習後のアルバイト等は注意が必要です。
テストが大変
他大学同様に、授業や実習の単位を取得するには試験又はレポート等の課題があり、この準備は空き時間に行います。授業や実習がたくさんある分、試験科目や課題が多いことも大変ですが、前述の通り必修科目がほとんどであるため、落とせない科目ばかりなのが辛いところです。
大学によっては、ある程度の落単の場合は留年ではなく再履修となります。再履修とは、次の学年に進学はできるけれども、落とした単位の授業を、下の学年と共に再度出席して試験を受ける必要があることです。
大学や授業によっては再試(追試)があることも。再試に合格すれば、再履修を免れることもあります。再試が行われる期間は試験休みや休暇中の期間であるため、一発目の本試で合格する事に越したことはありません。
再試も再履修も大変ありがたい制度ですが、皆がお休み中に再試の勉強をするのは辛いですし、上の学年ほど時間的余裕がない中、再履修科目があると大変忙しくて苦しい状況になります。そのため、皆必死に勉強します。
試験の準備がある
前述では定期試験の話題でしたが、ここでは、獣医学部在学中にある大きな2つの試験についてお話します。
獣医学共用試験(vetCBT、vetOSCE)
(参考 https://www.veteso.or.jp/exam/cbt/)
この試験は獣医師免許を取得するための獣医師国家試験とは違います。目的としては、
「獣医師免許を持っていない学生が実際に動物(患畜)と接するためには、その学生が一定の基礎学力(知識・技術・能力)をもっていることを社会に明示する必要であるため」であり、本格的な実習が始まる4年生後期終了時から5年生前期終了時にかけて実施されます。医学部などで導入されていたもので、獣医学部では2018年から始まった新制度です。
獣医学教育の必須科目を定めたモデル・コア・カリキュラムというものがあり、それに基づいた出題がされます。
(参考 https://www.juaa.or.jp/common/docs/accreditation/handbook/field/2016/shiryou_01.pdf)
獣医師の仮免許のようなものであり、他機関の実習に参加するにはこの試験に合格しなければなりません。必修の実習に参加できないということは、留年を意味します。
獣医師国家試験
獣医師になるための国家試験です。獣医学科を卒業しただけでは獣医師免許は取得できず、国家試験に合格する必要があります。
大学や研究室にもよりますが、基本的に6年次に所属研究室で卒論の準備をしながらの勉強となることが多いです。人によっては就活もします。この時期には授業や実習といった時間はほぼありませんが、国家試験や卒論に集中するためにアルバイト等は控える学生が増えます。
低学年のうちは忙しくない?高学年が忙しい
獣医学部は1年、2年の間は時間を作りやすい期間といえます。専門科目や実習がまだ少ないからです。授業の合間時間があったり、終了時刻がはっきりしていたり…と、時間の調整がしやすく、授業終わりにアルバイトやサークル、遊びの約束を入れやすいです。試験のための勉強の時間も無理なく作れるため、高学年と比べたら忙しくないでしょう。
高学年になるにつれ、専門科目や実習が増えて試験の難易度も上がり、研究室所属により時間の拘束がきつくなってきます。3年次には本格的に専門科目が増え始め、1、2年次のときの勉強のペースだとなかなか追いつかず、勉強の仕方を見直したり、アルバイトを考え直したのを覚えています。
獣医学部は学ぶことが多い、テスト勉強が大変、拘束時間が長い等々、特に高学年が忙しいのは間違いないです。しかし、学業をしっかりこなしつつ、バイトをしている人、部活、サークルに所属している人はたくさんいます。どう時間を捻出するかはその人次第です。
授業や実習が多いと、同学年の学生同士で協力する機会も多くなり、社会に出た後も繋がっている仲間が増えたようにも思います。また、忙しい中でも、効率よく勉強し、自分がどこまでだったら頑張れるのかを理解できる学生生活でもありました。正直、学業面の辛さは想像を超えるものでしたが、獣医学部での忙しくも充実した6年間は、私にとっては社会で生きていく大きな自信と武器を手に入れた6年間でした。
獣医学部を目指す受験生の皆様は、忙しい6年間が待っていることを悲観せず、希望を持って勉強し続けてほしいと思います。