獣医師になりたい学生が躓く個所に、動物の解剖実習や実験をするという過程があります。
「動物の命を救いたくて獣医師を目指しているのになぜ?」と疑問を感じる学生もいます。
獣医大学の動物実験の実態や、動物実験を行わないようにしている方法などをまとめて掲載しています。
獣医大学の動物実験
獣医学部を受験する生徒は獣医師になりたい生徒が多く「動物が好き」「動物の命を助けたい」という志の生徒が少なくありません。そのため躓きやすいのが動物実験です。
自らの手で解剖し、死体を片付けることに心を痛める生徒も多いのです。
こういった動物実験実態を、取材している記事が参考になります。
参考:獣医大の驚くべき実態、学生たちの苦悩
もちろん、無駄に実験を行っているわけではないのですが、昨今ではアニマルウェルフェア(Animal Welfare)が提唱され、農林水産省での動物の福祉、アニマルフェアについて述べられています。
そんな時代背景を踏まえ、当たり前のように行われていた動物実験を見直し、動物実験代替法を行うなど、現代の獣医学教育において動物を使用することが少なくなってきているという状況もあります。
「動物実験代替法」とは?
実習には可能な限りビデオや模型を利用して動物を用いない方法をとっている大学も増えてきています。これを、「動物実験代替法」といいます。今回は、「動物実験代替法」について紹介していきましょう。
1999年8月31日にイタリア、ボローニャにて動物実験の削除、純化及び置き換え代替法および実験動物法に関しての会議が行われました。この会議では、「3つのR」を積極的に組み入れるべきなど宣言した「ボロニア宣言」が採択されています。
「3つのR」とは削減(Reduction)、純化(Refinement)、および置き換え(Replacement)のことです。できる限り動物を供する方法に代わり得る方法で行おうという原則です。
この原則の起源は1954年に開始された動物福祉のための学連合の活動に伴い「3つのR (3Rの原則)」とされる、活動に遡ります。
1980年代の終わりごろになると、新しい法律やガイドラインがいくつかの地域に設定され道徳的な協議として実験動物を用いる手法の削減や純化あるいは置き換えを実施することが考えられるようになり、「3つのR」は、広く知れわたるようになりました。
参考:ボロニア宣言 | 日本動物実験代替法学会
国内で動物実験をしていない獣医大学はあるか?
日本でも、2005年に大学教育の国際化推進プログラム(海外教育実践支援)選定取り組みの概要及び選定理由という文部科学省のサイトにて、北海道大学における動物を犠牲にしない獣医臨床教育法の先進化が申請されています。
参考:文部科学省 平成17年度大学教育の国際化推進プログラム(海外先進教育実践支援)選定取組みの概要及び選定理由
このような北海道大学の申請をはじめ、「動物実験代替法」に関する取り組みは国内でも徐々に増加しています。
東京大学では、サイト上に「動物実験代替法」に関する記載がされています。
参考:実験動物研究室
また、動物愛護団体からの問いかけに対し、全国大学獣医学関係代表者協議会が実験動物の削減に努めていきたいとの回答述べられています。
参考:NPO法人 回答
具体的には、実験動物を使用せず、3Dプリンターを用いて模型を作成する方法や、コンピューターによる模擬実験、死体を利用した解剖実習といった代替方法が利用されています。
国内の獣医大学では、それぞれの大学ごとにガイドラインを決めて実験動物の使用量を減らしていくように動いているようです。
今後、動物実験の代替法について様々な方法が考えられてくると思います。
しかし、まったく動物を用いらずに教育の質を落とさずに獣医師を育てることは不可能であること、最低限の動物は用いらないと獣医師としての教育には不可欠であるとのことも現時点ではまた事実です。
獣医学という学問や獣医師という資格は、動物のためではなく人のためにあるものです。
医学教育や研究に動物が使用されると同様に獣医学教育や研究において動物が使用されることには矛盾がないといえます。
ですが、欧米では、動物の権利(アニマルライツ)が声高に叫ばれています。
動物にも権利があるのです。そして、獣医大学においても「3つのR」について奨励されていくべきだという声明を出されています。
今後、「動物実験代替法」については広がりが期待されています。獣医大学を選択するときに、「動物実験代替法」を実行しているかを進学時の判断に利用することも今後は考えてくことも必要となってきています。