獣医師は不足しているの?

獣医は不足しているの?

獣医は不足しているのでしょうか。それとも過剰なのでしょうか。この問題は、2017年加計学園の報道により注目をあびました。
特に、獣医大学がない四国では、検疫に携わる公務員獣医不足が深刻な問題となっています。しかし、国際的にみると日本の獣医師数は10年間で少しですが増加傾向にあります。では、なぜ、獣医が不足しているといわれているのでしょうか。

獣医は不足しているの?

加計学園のことで、獣医不足が取り上げられていますが本当に獣医は不足しているのでしょうか。もう少し詳しく見ていきましょう。
農林水産省の統計によると、平成26年12月末時点での獣医届け出数は約3万人です。
その中で、小動物獣医師は約40%で最も多く、公務員獣医師は約24%、大学教授や医薬品開発といったその他の分野では約11%となっています。医師が不足しているといわれているのは獣医師のうち公務員獣医師、産業動物獣医師についてなのです。

公務員獣医師の不足について

公務員獣医師の不足は、希望者が絶対的に少なく毎年約千人いる獣医系大学の卒業生のうち約4割は小動物の臨床医になり、公務員獣医師は約2割にとどまります。
この約2割の獣医をめぐって国や、自治体が奪い合っているのが現状です。
ここで公務員獣医師どんな業務をするのか見てみましょう。
公務員獣医師は産業動物の疾病予防や食肉検査といった業務にあたります。
全体の約7割に当たる33都道府県で公務員獣医師が不足している状態です。
公務員獣医師が不足する原因としては、獣医大学の卒業者の多くが、小動物の臨床医への道を選択するからです。
公務員獣医師が確保できているのは、千葉県・埼玉県・東京都・神奈川県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県などの大都市部をかかえる地域に集中しています。
※参照:衆議院質問本文より
www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a175015.html
公務員獣医師不足は主に地方自治体が問題視されています。
地方自治体では、近隣の自治体が、不足している公務員獣医師の取り合いになっているのが現状です。
※ 日本獣医師会 産業動物診療医師の確保対策 より
日本獣医師会産業動物臨床部会 産業動物・家畜共済委員会報告

産業獣医師の不足について

産業動物の獣医不足に至っては、産業動物の診療所が、昭和60年には546か所あったものが、平成16年時点で、300か所と減少しています。
また、産業動物の獣医師は平成7年で約2,000人いましたが、平成16年の時点で、約1,600人と減少傾向が見られます。平成4年から平成24年にかけて約2割にあたる1,000名が減少しています。同時に産業動物の獣医に高齢化も進んできておりこちらも問題となってきています。
獣医大学の新卒者の進路として産業動物の獣医を選択する学生は約70名です。これは、獣医大学卒業生の約1割にも満たない数字です。
また、産業動物を診察する家畜診療所の統廃合が進み診療区域が広域化することで、
往診時間が拡大しています。そのため診療所における効率が悪くなり経営は困難となってきています。行政からの支援も少なく、収入を伴わない業務が増加するので経営がさらに悪化しています。こういったことも、産業獣医師が不足する原因となっているようです。

公務員獣医師や産業動物の獣医不足には、近年のペットブームによる小動物臨床医が増加することで、産業動物を診察する獣医師や国や地方の自治体が欠けている公務員獣医師の不足を招いています。小動物の臨床獣医師のほうに人気がある理由として、産業動物の獣医師と比較して収入面が良いことが考えられます。

獣医師業界ではこれまで説明してきたような現状のため、公務員獣医師や産業動物獣医師の不足問題が改善する状況がみえていません。今後も深刻化する可能性がある問題となっています。獣医大学を卒業した後の進路として産業獣医師や公務員獣医師を選択する方法も視野に入れてみて下さい。

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