動物園の獣医師になるには

動物園の獣医師になるには

動物園の獣医師になるには、多くの情熱と努力が必要です。その過程や仕事内容などについてまとめました。

動物園の獣医師になるには

動物園の獣医師として働く場合も、他職種の獣医師と同様にまずは獣医師免許を取得しなければなりません。その後、動物園に就職するという形が一般的です。
獣医師免許を取得するには、6年制の獣医大学を卒業して獣医師国家試験に合格しなければなりません。まずは、獣医大学に合格することが最初の関門といえるでしょう。

獣医学のカリキュラムは、ペットとして需要がある犬や猫、家畜としての牛や豚、馬や鶏がメインとなります。獣医大学で主に勉強する動物のことを「牛馬豚犬(ぎゅうばとんけん)」と表現することがあります。
獣医師国家資格のコアカリキュラムの関係で、動物園就職を見据えた多種多様な動物種について細かく学習することはあまりありません。
しかし、牛馬豚犬といった基礎となる動物を抑えることで、その他の動物の勉強にも生かされます。

参照)獣医大学一覧

動物園の獣医師になるには獣医師免許取得後、動物園を運営する会社または自治体に就職するのが一つのゴールです。

一方、動物園の飼育員の場合は特に学歴や資格は必須ではありません。高校の畜産科、農業科、動物系専門学校卒業生、農学部の畜産系学科、理学部の動物学系学科の大学卒業生が多い傾向にあります。

動物園の獣医 仕事内容

動物園獣医師の仕事は、動物園の動物たちの健康管理、診療です。
動物次第ですが、治療がほとんどない日もめずらしくありません。臨床獣医師として診療などの専門業務を行うだけでなく、飼育員と共に飼育管理業務を行うことがほとんどです。求人にて飼育員兼務の募集をよく見かけます。

飼育員は、餌の準備(調理)、餌やり、清掃、健康管理のための観察といった飼育作業から、動物園の来園者対応、事務、物販、イベント企画準備、展示物作成といった動物園運営に関わる作業までとても幅広い仕事を行います。

動物園としての社会的役割を果たすことも、動物園で働く者にとっては大事な仕事です。日本動物園水族館協会は以下4つを動物園の役割としています。

・種の保存
・教育・環境教育
・調査・研究
・レクリエーション

参照)日本動物園水族館協会

動物園の獣医師としての仕事は、広い視野で見ると、この動物園の役割を果たすための一つの職業といえます。

飼育員としても動物園獣医師としても共通の悩みの一つは、動物園の動物種のデータや文献が少ないことです。
医学ではデータ的根拠に基づいた一般的な治療のことを「標準診療」といいます。標準診療は、それを経験した患者が多くいるために安全性が高い診療方法といえます。ペットの獣医学分野でもこの標準診療を確立していこうという動きがあります。
しかし、動物園の場合、動物種にもよりますが、どう飼育したら正解なのか、どんな治療が動物に負担なく効果が得られるのか、というデータ的根拠が得られにくいです。野生の生態も勉強し、今ある飼育環境下でどのように管理していくか考えていきます。
コツコツ観察と勉強を繰り返す地道な作業を続ける辛抱強さと、正解のない問題をクリエイティブな思考で解決していく力が必要です。

そのため、動物が元気になったり、来園者に喜んでもらえたりすると、飼育に携わった人みんなが大きなやりがいを感じられる素敵な仕事です。

このように大変な仕事ですが、毎日動物と関わる仕事ですから動物好きには夢のような仕事であるかもしれません。

動物園の獣医師になりやすい大学は?実習とインタ―ン

この大学を卒業したら動物園の獣医師になれるという特定の大学、動物園の獣医師になりやすいという特定の大学は、国公立私立問わずありません。動物園獣医師になるために特化した授業や実習を大学側がカリキュラムとして組んでいることはほぼありません。

おすすめとしては、過去に動物園獣医師や飼育員を輩出した研究室を持つ大学や、飼育管理についての論文を勉強できそうな研究室を持つ大学などでしょうか。もちろん、だからといって動物園で働けるという確証は得られません。

動物園側が、実習やインターンを実施していることがあります。獣医学実習、飼育実習、学芸員実習、調査研究実習、動物園実習などです。動物園の獣医師になりたい、興味があるという方はこの実習への参加を強くおすすめします。

例えば以下のような募集です。

【恩賜上野動物園】
対象:短大・大学・大学院及び専修・各種学校に在籍する動物又は動物園に関係のある学科を専攻している方向け
飼育展示コース(動物園に関する講義と飼育展示業務の体験)、獣医臨床コース(動物園の動物病院係に関する講義と獣医臨床業務の体験)を実習を実施
https://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/school_program/index.html

【京都市動物園】
大学において獣医学課程を学ぶ4年生以上で、当該大学から依頼のあった者
・野生動物のハンドリング及び検査・診療・解剖技術に関する講義及び実践
・京都市動物園の概要と役割などについての講義
・動物園で行っている調査研究・展示・資料保存の各業務に関する講義・実践など
https://www5.city.kyoto.jp/zoo/visitor/program/training/vet/

【井の頭自然文化園】
当園の事業に関心を持ち、短大・大学・大学院及び専修・各種学校に在籍する動物または動物園、水族館に関係のある学科を専攻している2年生以上で、在籍校からの公的な推薦を受けられる方
(動物学、獣医学、生物学、畜産学、水産学のほか、専修・各種学校における動物取扱業関連の技術者養成課程を含む)

以上のように、対象者や申し込み期間が限られています。実習を行わない年があったり、人数が少ない募集であることもしばしばあるため、動物園で実習を考えている希望者は、募集状況をしっかり把握し、情報収集に努めることが大事です。

大学の推薦が必要な場合もありますので、期間には余裕をもって対応しましょう。

動物園で働く獣医師の給料と年収

獣医師の年齢別の年収は以下の通りです。
25~29歳では、男性が397万円、女性が421万円
30~34歳では、男性が525万円、女性が439万円

動物園の獣医師の年収は、動物医療センターや動物病院の勤務医と比べて、給与が安くなることが多いです。獣医師としての専門業以外の、飼育員と同様の業務がほとんどであることも関係あると思われます。専業で獣医師として勤務するより給与が安価となりやすいのです。

一般的な臨床獣医師は、経験を積んだ後、開業する人が多いです。その背景には、開業医の方が、勤務医より年収が高くなる傾向があります。
・勤務医:約250万円~400万円
・開業医:約500万円~1000万円

開業医の中でも、立地が良く患者が多い動物病院ではさらに年収が高くなります。

動物園の獣医師として開業することは不可能ではありませんが、結局、動物園近くの普通の動物病院に業務委託として依頼するなんてこともありますし、動物園動物専門で開業して働いていくにはそれなりの経験が必要ですから、現実的には動物園専門の開業医として働くのはかなり難しいです。

勤務医として働き続けることになるため、開業医より収入が低くなることを覚悟せざるを得ないでしょう。

参照)獣医の給料と年収

動物園 獣医師 募集や求人が少ない!?

動物園の獣医師は大変人気のある仕事であり、動物園で働きたいから獣医師を目指したという人もいます。しかし、動物園の従業員の定期採用を行うことは少なく、欠員が生じた場合に募集されます。さらに日本の動物園の数はほぼ一定を保っています。倍率が非常に高い求人です。求人募集されるタイミングを見計らうのも難しく、運といってもいい状況です。

動物園の獣医師求人はいくつか種類があります。これは動物園の経営母体に関連しており、以下3つが挙げられます。
①自治体が管理している公立動物園
②外部団体が管理する公立動物園
③民間動物園

①自治体が管理している公立動物園

公務員試験を受け公務員として就職します。ただ、必ずしも動物園に配属されるわけではありません。求人の時点で、動物園の獣医師として募集している自治体はほとんどなく、自治体の獣医職としての募集となります。
動物園以外の業務にて数年働いたのち異動で動物園勤務となることはあり得ますが、必ずしも異動の希望が叶うわけではありません。

②外部団体が管理する公立動物園

この場合は管理する団体の求人として募集されます。動物園の獣医師として募集されますが、非常に狭き門です。動物園の獣医師の求人募集はとても少なく、空きが出づらいポジションのため、やっと採用情報があっても採用人数は1人ということも。

③民間動物園

こちらも動物園の獣医師としての求人募集です。
例として、2024年に募集があった東武動物公園の求人を見てみましょう。

【東武動物公園】
・応募資格
新卒の場合:2024年3月末に、大学卒業、獣医師国家資格取得見込みの方
中途の場合:獣医師国家資格を取得済みで、取得日から5年以内の方
・レポートの提出、筆記試験、面接試験あり
・正社員として募集

https://www.tobuzoo.com/recruit/

試験、面接の他、レポート作成もあり、沢山の募集から選出されたことが伺えます。
動物園のほかに、動物とのふれあい広場や施設、サファリパークも求人を出すことがあります。現状、新しい動物園がオープンするという事はほぼないですから、現在ある動物園や施設の求人情報の情報戦ということになるでしょう。

動物園の獣医師を目指すということは、準備に費やす労力に比べて不確定要素が多く、非常に厳しい世界に進むことになります。しかし不可能ではなく、実際それを乗り越えて動物園獣医師として働いている人も存在します。応援しています。
Pettie獣医大学を運営するInsityは、全国の獣医師の転職サイトの情報を一か所に集約した日本最大級の動物病院求人サービス「Pettie獣医師キャリア」を運営しています。
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動物園の求人掲載機会は多くは無いですが、今後掲載がある可能性も!是非ご利用ください。
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