公務員獣医師は、動物の健康管理や社会の安全を支える重要な役割を担っています。しかし、「ペットの獣医師」とは異なり、公務員として働く獣医師の仕事は多岐にわたる専門性を要求されます。本記事では、公務員獣医師になるための道筋や仕事内容、年収、そして求められる役割を紹介します。
公務員獣医師になるには
公務員獣医師とは、国や地方自治体に所属し、社会全体の動物管理や伝染病予防、食肉の安全管理を担う職業です。仕事内容は、ペットの診療を中心とする小動物臨床獣医師とは異なり、地域全体や社会の健康維持に重きを置いています。国家公務員として農林水産省に所属する場合もあれば、地方自治体の職員として働くケースもあります。
公務員獣医師になるには、まず獣医師免許が必要です。日本には獣医学課程を持つ6年制の大学が17校存在していますが、公務員獣医師になるための大学があるわけではありません。獣医師になるためには、まずこれらの大学に入学し、卒業後に獣医師国家試験に合格しなければなりません。
公務員獣医師への道筋は以下の通りです。
- 獣医大学への入学
- 6年間の学業修了後、国家試験合格
- 国家資格取得後、公務員試験に応募
獣医大学への合格が第一のステップとなり、その後に国家資格と公務員としての就職活動が続きます。
新卒の場合は、公務員試験の日程によっては順番が前後します。卒業見込みの状態で、先に公務員試験、その後獣医師国家試験を迎え、卒業するということも多いです。
参照)獣医大学一覧
公務員獣医の仕事内容とやりがい
公務員獣医の仕事内容は?
一般的に「獣医師」と聞くと、動物病院で犬や猫などのペットを診療するイメージが浮かぶかもしれません。しかし、公務員獣医師の仕事はよくイメージされる獣医の仕事とは異なり、国や自治体の要請に応じた幅広い活動が求められます。以下は公務員獣医師の代表的な仕事内容です。
国家公務員獣医師(農林水産省)
- ・伝染病の監視と予防:家畜の健康状態のチェックや家畜伝染病の防止
- ・食肉検査:安全な食肉の供給を支えるための検査業務
- ・輸出入検査:動物由来製品の検疫や輸出入に関わる審査
地方公務員獣医師(県庁、市町村役場、家畜保健衛生所、家畜試験場、畜産センター、公立の牧場など)
- ・地域の畜産振興:家畜の管理や地域の農家支援
- ・動物園や公立施設の動物管理
- ・保健所業務:狂犬病の予防接種や動物保護活動
公務員獣医師のやりがい
公務員獣医師は、社会貢献性の高い仕事に携わることが最大の魅力です。動物の健康を守るだけでなく、人間社会の安全や環境保全にも寄与するため、地域全体の発展を支える役割を担います。特に、家畜の病気予防や食の安全確保に貢献できることが大きなやりがいの一つです。
参照)獣医系技術職員・畜産系技術職員の業務内容をご紹介します!農林水産省
公務員獣医の給料と年収
獣医師の年収は、勤務先によってことなりますが、年齢別の平均的な年収データを見ていくと、25~29歳では、男性が397万円、女性が421万円となっています。30~34歳では、男性が525万円、女性が439万円です。
一方、公開されている公務員の給料は以下のようになっています。
・地方公務員
全地方公共団体 (男女計)
飼育展示コース(動物園に関する講義と飼育展示業務の体験)、獣医臨床コース(動物園の動物病院係に関する講義と獣医臨床業務の体験)を実習を実施
平均基本給月額 「薬剤師・医療技術職」332,042円
1年で(12倍)3,984,504円
公務員のボーナス 4倍程度 1,328,168円
⇒合計 年収 5,312,672円程度
・国家公務員
令和6年国家公務員給与等実態調査の結果
行政職俸給表(一)405,378 円
1年で(12倍)4,864,536円
公務員のボーナス 4倍程度 1,621,512円
⇒合計 年収 6,516,048円程度
給与に加えて初任給調整手当や、時間外勤務手当などの諸手当が手厚く、動物病院勤務に比べて福利厚生が充実しているという点は、公務員獣医師として働くメリットともいえます。各種休暇制度が整っており、仕事と生活のバランスを保ちやすいのも公務員の魅力です。
参照)
・地方公務員給与実態調査 (総務省)
・令和6年国家公務員給与等実態調査の結果(人事院)
・獣医の給料と年収
公務員獣医が不足?理由は?
公務員獣医師を検索すると、「待遇改善」「 辞めたい」「不人気」など、ネガティブなワードが多く、マイナスのイメージの検索が出てきます。なぜ公務員獣医師は不人気で不足しているのでしょうか。その背景には、いくつかの複合的な要因が関係しています。
1.公務員獣医師を目指す学生が少ない
そもそも、公務員獣医師の応募人数が少ないことも一因です。獣医学部に進学する学生の多くは、ペットを診療する臨床医を志望し、家畜や公衆衛生分野を専門とする公務員獣医師の道を選ぶ人は限られています。そのため、公務員としての採用枠に対して応募者が不足する事態が起こっているのです。小動物臨床を希望する学生は全体の約4割なのに対し、公務員獣医師を希望する学生は約2割です。
2.地方への就職者が不足
地方自治体で働く公務員獣医師の仕事が不人気であることも無視できません。地方公務員獣医師は、地域の畜産業を支えるために家畜の健康管理や食肉の安全検査に従事する仕事がほとんどですが、都市部での生活を望む若者にとって、地方への就職は敬遠されがちであり、地方自治体は優秀な人材を確保するのに苦労しています。
3.仕事内容への不満
公務員獣医師の仕事は、予想以上に精神的な負担が大きいという問題もあります。動物の殺処分に関わる仕事や、行政の一環として市民からの苦情対応や事務処理を行うことも多く、こうした業務は動物の診療に集中したいと考える獣医師にとって大きなストレス要因となっています。そのため、やりがいを感じられず退職を考える人も少なくありません。
また、公務員獣医師は希望する業務に従事できないケースもあります。希望しても配属が叶わない事も珍しくありません。
公務員獣医の募集
公務員獣医師の不足は逆に考えれば、獣医師を目指す人にとっては良いチャンスでもあります。全国の自治体や農林水産省が積極的に募集を行っているため、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
公務員獣医師になりたい方は、各自治体のホームページに掲載されている求人募集をご覧ください。
例
農林水産省獣医系技術職員の採用について
https://careers.maff.go.jp/recruit/requirement/c03/
福岡県職員採用試験
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/saiyo.html
北海道職員(獣医師)募集
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/nsi/109061.html
兵庫県採用選考試験案内
https://web.pref.hyogo.lg.jp/recruit/exam/guide/index.html
日本獣医師会ホームページ 人材募集検索
https://jvma-vet.jp/recruit/recruit_activelist.php
獣医学は動物のための学問と思われがちですが、突き詰めると人間のための学問です。
人間が動物を食べる限りその安全性を管理したり、人間が地球で生活したりするうえでの公衆衛生を保つことは、私たちが生きていく上で大変重要なことであり、それを仕事としているのが公務員獣医師さんたちです。社会的に需要の高い仕事であることは言うまでもありません。
ライフワークバランスや福利厚生、やりがいが重要視される時代になり、地方創生も進む中、公務員獣医師を希望する獣医学生の声も少しずつ増えてきました。獣医師を目指す受験生や獣医学生には、一度は将来の職業候補として検討してほしい進路です。
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