愛玩動物看護師と獣医師の違い

愛玩動物看護師と獣医師の違い

令和4年5月1日に愛玩動物看護師法が施行されました。いわゆるペットの看護師、愛玩動物看護師が国家資格となり、令和5年4月には、愛玩動物看護師第一号が生まれます。将来動物にかかわる仕事を目指している方にとっては確認しておきたい、獣医師と愛玩動物看護師はどう違うのか、獣医師と愛玩動物看護師の違いについてまとめました。

愛玩動物看護師とは

愛玩動物看護師とは、農林水産大臣及び環境大臣の免許を受けて、愛玩動物看護師の名称を用いて、愛玩動物の診療の補助や、疾病にかかった、または負傷した愛玩動物の世話や看護、愛玩動物の飼育者に対する愛護や適正な飼育に関する助言等を業とする者をいいます。
参照)環境省HPよりhttps://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/doubutsu_kango/

愛玩動物看護師国家試験に合格し、登録を行った者が愛玩動物看護師となります。愛玩動物、つまりペットの看護師としての国家資格ということです。愛玩動物看護師法では、愛玩動物として、「犬、猫、愛玩鳥(オウム科全種、カエデチョウ科全種、アトリ科全種)」と規定されています。
参照)https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/doubutsu_kango/qanda.html#a-2-3

これまでは愛玩動物の看護するための必須の資格及び国家資格はありませんでした。愛玩動物看護師が国家資格化することにより、専門性が増し、チーム医療体制が充実することが期待されています。

獣医師と愛玩動物看護師の違い

動物にかかわる職務のうち、国家資格であるのは獣医師と愛玩動物看護師の二つのみです。主な違いは以下の通りです。

・管轄省庁
・業務内容
・国家試験受験資格(学校等)
・対象動物

すべての国家資格には、管轄省庁があります。獣医師の場合は農林水産省ですが、愛玩動物看護師の場合は農林水産省および環境省です。省庁のホームページにて調べるときに注意してみてください。

大きく異なるのは業務内容です。獣医師は獣医療のうち、診療に特化した業務を、愛玩動物看護師は獣医療の一部と看護、その他栄養面や手入れ等の指導・助言を行います。詳しくは後述します。

また、国家試験受験資格を得るまでの過程が違います。獣医師の場合は獣医学科の大学を卒業する必要があります。愛玩動物看護師の場合は、新しい資格であるため様々な特例がありますので、各省庁のホームページにて確認が必要です。

それぞれの資格の対象動物は、各法律で定められています。
獣医師法:”獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずら その他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない”
と規定されています。
愛玩動物看護師法:”獣医師法(昭和24年法律第186号)第17条に規定する飼育動物のうち、犬、猫、その他政令で定める動物”
と規定されています。

どちらも国家資格が必要

前述の通り、獣医師、愛玩動物看護師ともに国家資格が必要です。

獣医師

獣医学の正規の課程(6年制)を修めて卒業した者または卒業見込みの者に、農林水産省管轄の獣医師国家試験の受験資格が与えられます。獣医師国家試験に合格すれば、獣医師免許を取得することができます。
参照)https://jyui.net/howto/

愛玩動物看護師

令和元年6月に愛玩動物看護師法が制定、令和4年5月1日に愛玩動物看護師法が施行されました。これにより、民間資格として広く利用されていた認定動物看護師試験は2021年度をもって終了し、2022年度以降は、農林水産省及び環境省が管轄する愛玩動物看護師国家試験が実施されます。

愛玩動物看護師の国家試験受験資格については、大学にて指定の科目を修めて卒業した者、指定の養成所にて3年以上必要な知識や技能を修得した者等が規定されています。また、新しい国家資格であるため、受験資格について、講習会や予備試験を行う等の特例も定められています。
参照)https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/doubutsu_kango/220214.html
新しい国家資格ですので、規定に変更がないかより注意が必要です。

第1回愛玩動物看護師国家試験は令和5年2月19日(日)に実施され、令和5年(2023年)の4月以降に、国家資格である「愛玩動物看護師」第一号の方々が生まれます。

業務内容に違い

獣医師と愛玩動物看護師の業務内容や範囲に違いがあります。

獣医師

獣医師の業務は「獣医療」です。獣医療とは、手術やX線検査、診察等に基づく診断、採血や投薬、入院動物の看護等のことをいいます。このうち、手術やX線検査、診察等に基づく診断といった診療行為は獣医師のみが行うことのできる独占業務となります。

愛玩動物看護師

愛玩動物看護師の業務は、主に「獣医療」のうち、診療の補助と看護です。診療の補助には採血や投薬、マイクロチップの挿入、カテーテルによる採尿が含まれます。その他、動物の手入れや栄養管理に関する指導・助言も業務範囲といえます。愛玩動物看護師法により、可能となった業務は「診療の補助」の部分です。従来は獣医師のみの業務でしたが、愛玩動物看護師は、獣医師の指示の下、愛玩動物に対する診療の一環として行われる衛生上の危害を生ずるおそれが少ないと認められる行為を行うことができます。

このように、獣医師と愛玩動物看護師の業務の違いは、人間に対する医療でいうところの、医師と看護師に似た部分もあるかもしれません。
これは、現場で働くスタッフにはとても大きな進歩です。これまでは法律上、ほぼ獣医療のすべての過程を獣医師が行わなければなりませんでしたが、愛玩動物看護師の業務範囲が広がったことで、獣医師は本来の業務(獣医師のみが行える獣医療業務)に集中することができます。業務効率があがり動物病院側の利点となるだけでなく、飼い主様側も、より専門的な立場となった愛玩動物看護師への信頼向上につながるのではないでしょうか。
参照)https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/doubutsu_kango/attach/pdf/index-3.pdf

大学や専門学校が異なる

獣医師と愛玩動物看護師ともに、国家試験に合格することが資格取得のゴールです。そのため、国家試験の受験資格をどの様にして得るかに違いがあり、通うべき学校も異なります。

獣医師

獣医学の正規の課程(6年制)を修めて卒業した者または卒業見込みの者に国家試験受験資格が与えられます。つまり、獣医学科を卒業することが必須です。受験資格を得るまでに6年かかります。
参照)https://jyui.net/university/

愛玩動物看護師

基本的には、農林水産大臣・環境大臣が認める科目を終了することで国家試験受験資格を得ることができます。管轄省庁のホームページではその科目を開講する大学や養成所の一覧が公開されていますのでチェックしてみましょう。受験資格を得るまで約3〜4年かかります。
参照)https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/doubutsu_kango/220214.html#1

獣医師と愛玩動物看護師、様々な違いがあることがわかりました。動物に関わる仕事を希望する方のなかには、どちらの資格を取得するか、迷うこともあるかもしれません。獣医学科への学業面での入学のハードルや6年の通学、大学の数も多くないため、気持ちだけでは目指すことも難しいです。一方の愛玩動物看護師も、新しい資格ということで未知数な点が多くあります。しかしどちらを選んでも不正解ということはありません。
自分が持っている課題を整理したうえで、それでも迷う場合、やはり重要なのは資格取得後のことです。
今のところ、どちらの資格も更新の必要がないため、剥奪されない限りずっと背負っていく資格です。将来、どんな業務をしたいのかも重要ですが、どのような立場をとることが自分に向いているのか、その職務についた後の自分を想像できると良いのではないでしょうか。

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