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VCESってどんな団体?VCES主催のキャリアイベント「VCESアカデミー@宮崎」を取材してきました!

秋晴れの土曜日、宮崎大学木花キャンパスの農学部棟にたくさんの獣医学生が集まりました。
一般社団法人獣医キャリア教育支援機構(VCES)が主催する「VCESアカデミー@宮崎大学」は、将来の進路に悩む学生たちに、現場で活躍する獣医師の生の声を届けるキャリア教育イベントです。

VCESは、獣医師を志す学生や若手獣医師のキャリア形成を支援する団体として、全国の大学や自治体、動物病院と連携しながら、講演会や研修などの教育事業を展開しています。
代表理事を務めるのは、関内どうぶつクリニックの代表も務める獣医師の牛草貴博先生です。

13時から17時まで、約4時間にわたって開催されたこのイベントは、前半の講演会と後半の企業勉強会の二部構成でした。
獣医師として取材させていただいた私が、その模様をお伝えします。

目次

前半には多種多様のキャリアを持つ獣医師が登壇

前半のプログラムでは、異なるフィールドで活躍する3名の獣医師の先生方が、それぞれの経験とキャリア観を語ってくださいました。

Vol.1 「女性獣医師として、開業医として」

堀江敦子先生(このは動物病院 院長)

最初に登壇されたのは、熊本県で動物病院を開業されている堀江先生です。
女性獣医師としてのキャリア形成について、とても率直にお話しくださいました。

「開業するまでには、いくつもの選択と葛藤がありました」という堀江先生の言葉。苦労された就活から勤務医時代の経験、プライベートと仕事の両立、そして開業という大きな決断。
特に会場の女子学生たちは真剣な眼差しで聞き入っていたように感じました。

特に印象的だったのは、「自分らしい働き方を見つけることが大切」というメッセージです。
臨床獣医師としてのやりがいと、プライベートとのバランスをどう取るか。リアルな経験談は、将来を考える学生たちにとって貴重な指針になったのではないでしょうか。

Vol.2 「地域を守る、公務員獣医師の仕事」

伊藤学志先生(宮崎県都城家畜保健衛生所 技師)

続いて登壇されたのは、地元・宮崎県で公務員獣医師として働く伊藤先生です。
家畜防疫や食肉衛生検査など、公衆衛生を支える現場の仕事について紹介してくださいました。

「獣医師の仕事は動物病院だけではありません」という言葉の通り、口蹄疫や鳥インフルエンザといった家畜伝染病の防疫対策、食の安全を守る食肉検査。地域社会に不可欠な、でも学生にはあまり知られていない獣医師の姿がそこにありました。

公務員獣医師の魅力として、安定した雇用条件や、広域的な視点で畜産業全体に関われる点を挙げられていました。
「目の前の一頭だけでなく、地域全体の動物と人の健康を守る仕事なんです」という言葉が印象に残りました。

Vol.3 「日本一の馬産地で働く」

野坂拓史先生(日高軽種馬農業協同組合 静内診療所 エクワインメディカルセンター 所長)

最後は、北海道日高から駆けつけてくださった野坂先生です。
日本有数の馬産地で産業動物獣医師として働く日々を語ってくださいました。

サラブレッドの繁殖から競走馬の診療まで、馬の一生に寄り添う仕事。
「日高には年間約7,000頭以上の子馬が生まれるんです」という数字に、会場も驚きの様子。

野坂先生が強調されていたのは、産業動物獣医療の奥深さとダイナミズムです。
「馬の命を預かる責任は重いですが、その分やりがいも本当に大きいです」。
大動物臨床の魅力が、スクリーンに映し出される雄大な牧場の風景とともに伝わってきました。

司会を務められたVCES代表理事の牛草貴博先生は、3名の講演を受けて「獣医師のキャリアは多様化している。大切なのは、自分が何をしたいのかを見つめることです」とまとめられました。

後半:動物病院ブースで具体的な将来像を描く

休憩を挟んだ後半は、企業勉強会の時間です。会場内に設置された複数の動物病院ブースを、学生たちが自由に訪問する形式でした。

各ブースには現役の獣医師や動物看護師、採用担当の方々がスタンバイ。病院の特色、働き方、給与体系、研修制度など、就職を視野に入れた具体的な質問が飛び交っていました。

ある5年生の女子学生は

獣医学生

講演で開業のお話を聞いて興味が湧きました。でもまずは勤務医として経験を積みたくて。どんな病院で働くかが大事だなと思って

と、真剣に各ブースを回っていました。

また3年生の男子学生は

獣医学生

公務員か臨床か、まだ決めかねていたんですが、今日お話を聞いて、まずは実習で色々な現場を見てみようと思いました

と話してくれました。

ブースを出展された動物病院の採用担当者の方は

採用担当者

学生さんの質問が年々具体的になってきていますね。キャリアについて真剣に考えている様子がひしひしと伝わってきます

と手応えを語っていらっしゃいました。

多様な選択肢を知ることの意味

イベント終了後、参加した学生さん数名にお話を聞かせてもらいました。

2年次獣医学生

獣医師=小動物の開業医、というイメージしかなかったんですけど、こんなに選択肢があるんだって改めて驚きました。

4年次獣医学生

女性獣医師、それもご自身で開業までされている先輩のお話を聞けたのが本当に良かったです。

4年次獣医学生

馬の仕事、すごくかっこよかったです。北海道で働くのもいいなって思いました。

それぞれの学生さんが、それぞれの気づきを得ている様子が印象的でした。

「現場で活躍する先輩獣医師の言葉には、教科書にない重みがあります。学生たちには、様々な働き方を知った上で、自分らしい道を選んでほしい。」
そんなVCESの理念が凝縮したようなイベントでした。

おわりに

獣医師という職業の可能性は、想像以上に広いものです。
小動物臨床、大動物臨床、公務員、研究者、教育者、そして企業獣医師。
それぞれのフィールドで、情熱を持って働く獣医師たちがいます。

今回のイベントに参加した学生たちの目は、確実に未来を見据えていました。彼ら・彼女らがこれから歩む道は様々でしょう。でも、多様な選択肢を知って、自分の意志で選び取った道であれば、きっと充実したキャリアを築けるはずです。

VCESアカデミーは、そんな未来の獣医師たちの第一歩を後押しする、とても貴重な機会となっていました。

イベント概要

イベント名VCESアカデミー@宮崎大学
日時2025年11月1日(土)13:00〜17:00
会場宮崎大学 木花キャンパス
主催一般社団法人 獣医キャリア教育支援機構(VCES)
対象宮崎大学農学部獣医学科 全学年
関連リンクhttps://vces.or.jp/

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この記事を書いた人

北海道大学を次席で卒業し、獣医師資格取得。日本獣医師会会長表彰受賞。
幼少期から鳥やウサギ、犬などに囲まれて暮らし、獣医師を志しました。
大学卒業後は関東の動物病院で勤務した後、IT企業でWebディレクターとして働いています。
動物に関する正しい情報を発信したいという想いから、自身のブログ「獣医師ももブログ」 を立ち上げ、日々ブログを更新しています。

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