南九州畜産獣医学拠点とは?産業動物獣医師を目指す人必見!

南九州畜産獣医学拠点とは?産業動物獣医師を目指す人必見!

近年、日本の畜産業界では産業動物臨床獣医師の需要が高まり続けています。特に、牛、豚、馬などの産業動物を対象とした診療や管理を専門とする獣医師の役割は重要です。
2024年4月に開設された「南九州畜産獣医学拠点(SKLV)」が全国の獣医学生の実習受け入れを開始しました。産業動物臨床獣医師を目指す獣医学生、獣医師にとって、新しい可能性と成長の場となるかもしれません。本記事では、産業動物臨床獣医師の役割や就職先、そして南九州畜産獣医学拠点の魅力について紹介します。

産業動物臨床獣医師とは

産業動物とは

産業動物とは、主に農業や畜産業に関連する動物で、牛、豚、鶏、馬、羊、山羊などが含まれます。これらの動物は「大動物」や「経済動物」とも呼ばれ、畜産業においては食肉や乳製品、卵、皮革などの生産に重要な役割を果たしています。産業動物の健康管理や病気の予防・治療は、農場の生産性を維持するために欠かせない要素です。
畜産業は地域経済にとっても重要な産業であり、これらの動物の健康状態や飼養環境を維持し、品質の高い畜産物を安定的に供給することが求められています。このような背景から、産業動物臨床獣医師の需要が増加しているのです。

産業動物臨床獣医師とは

産業動物臨床獣医師は、牛や豚、馬、羊、山羊などの産業動物を対象にした診察や治療を専門とする獣医師です。彼らの仕事は、単に病気の診断や治療だけでなく、繁殖管理、衛生管理、飼料設計など多岐にわたります。例えば、乳牛の繁殖効率を高めるための計画を立てたり、感染症の発生を予防するための衛生管理の指導を行ったりすることも含まれます。
産業動物臨床獣医師になるためには、小動物臨床獣医師や他職種の獣医師と同様に、6年制の獣医大学を卒業し、獣医師国家試験に合格する必要があります。現在、産業動物臨床獣医師は人手不足が深刻な課題となっており、特に地方ではその傾向が顕著です。そのため、今後の需要拡大が見込まれており、産業動物臨床獣医師を目指す人には大きなチャンスが広がっています。

南九州畜産獣医学拠点とは

「南九州畜産獣医学拠点(South Kyushu Livestock Veterinary Center: SKLV スクラブ)」は、2024年4月に鹿児島県曽於市に新設された施設です。この施設は、鹿児島大学と連携して旧県立財部高校跡地に整備されました。その目的は、将来を担う産業動物臨床獣医師や畜産技術者の育成・確保、産業の創出・技術革新の推進、さらには地域の交流人口の増加が挙げられています。実際に民間事業者が管理する産業動物を通じて、獣医学生は、診断や一般治療、繁殖、防疫、アニマルウェルフェアといったことを現場で学ぶことができる施設です。

この施設は、獣医学生の産業動物臨床実習の現場としてだけの施設ではありません。次世代閉鎖型牛舎というものを採用し、先進的な畜産業を実践するモデルエリアとしての役割も果たしています。
環境管理技術と自動化システムを駆使し、温度、湿度、換気、光の条件を最適に制御することで、牛の健康とストレスの軽減を図り、病気の発生リスクを減少させる仕組みです。これは、アニマルウェルフェアの向上とともに、高品質な畜産物の安定供給が実現できるため、ブランド牛の生産と海外輸出、畜産による地方創生を目指すことができます。次世代閉鎖型牛舎は海外でも取り入れられており、労働力の効率化による労働コストの削減にもつながっています。

さらに、JRA(日本中央競馬会)の畜産振興補助金を活用した馬エリアや、研究用鶏舎、レンタルオフィス、カフェ、宿泊施設、福祉施設など、地域のための施設も併設されており、多機能な側面も持っています。
参考)南九州畜産獣医学拠点HP

南九州畜産獣医学拠点(SKLV スクラブ)は、次世代型畜産のモデル施設として、地域と連携しながら持続可能な畜産業の発展に寄与していくことが期待されています。

産業動物臨床獣医師志望の学生実習の受け入れ

南九州畜産獣医学拠点では、2024年8月から県外の学生の実習受け入れを開始しました。これまでは主に鹿児島大学の学生が学んでいましたが、現在では全国の大学からも実習生を受け入れ、畜産業を担う次世代の人材育成に力を入れています。2024年8月には、5つの大学から10人の学生が訪れ、実習を行いました。
実習プログラムには、牛・馬・鶏・豚のベーシックコースや、牛専修コース、馬専修コース、家畜衛生専修コースがあり、参加者は自分の志望分野に合わせて多様な学びの機会を得ることができます。
飼養衛生管理法をもとに産業動物のハンドリングや、採血や検査、分娩、防疫などの実践的なプログラムが臨床実習として組み込まれています。
産業動物臨床獣医師になるために必要な知識や技術を、実際の現場で学生のうちから体験・習得することができ、人材育成にも役立つという点は、学生にとっても畜産業界にとっても重要なことです。
実習に来た学生には、買い物や観光のための電動アシスト付き自転車が貸与されました。さらに、広い施設内を移動するための3輪モビリティの利用、電気自動車のカーシェアも可能とのことです。他県からの学生が地域のことを知り興味を持つことにも役立っています。
また、SKLVセミナーと呼ばれる無料のセミナーも不定期で開催されており、最新の知識や技術を学ぶことができます。

参考)鹿児島大学共同獣医学部附属南九州畜産獣医学教育研究センター(SKLVセンター)

獣医学生と産業動物実習

この度の南九州畜産獣医学拠点(SKLV)の学生実習受け入れ開始のニュースは、獣医師を目指す受験生、獣医学生にとって、大きな意味があり、その背景として以下が考えられます。

まず、産業動物臨床獣医師を目指す学生にとっての悩みの一つとして、実習先の選択肢の少なさがあります。
いわゆるペットの診療を行う小動物臨床に比べて、実際の現場を体感できる場が少なく、施設があったとしても、学生実習の受け入れが可能かどうかは別問題です。地方の施設であることがほとんどのため、学生の宿泊の支援等の問題もあります。通常業務に加えて学生を受け入れるということが、なかなか難しいというのも理解できます。
また、仕方のないことでもありますが、施設によって実習の質に偏りが出てしまうこともあります。

そして、学生にとっての実習の重要度は高いという点も無視できません。実習が獣医学生の進路に影響することも多くあります。大学で行われた授業や実習を通じて、小動物臨床志望の学生が産業動物志望に変わったという話はよく耳にすることです。現時点で別分野志望の獣医学生、受験生であっても、大学の実習カリキュラムは学生の進路に影響する大きなイベントとも言えます。

この大きなイベントである実習先の選択肢が増え、高い質の学びの機会が増えたというのは、とても喜ばしいことです。

産業動物臨床獣医師の職業は、畜産業界の未来を支える重要な役割を担っています。現在、国としても畜産業界の人材不足は大きな課題とされており、その解決に向けた対策が進められています。地方創生とも深く関連しており、将来性がある職種と言えるでしょう。南九州畜産獣医学拠点は、こうした状況に応えるべく、次世代の産業動物臨床獣医師を育成し、地域の活性化に貢献する新たな場として注目を集めています。産業動物臨床獣医師を目指す皆さんにとって、新しい施設は学びと成長の大きなチャンスでしょう。

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