岩手大学に獣医学部共同獣医学科が新設

岩手大学に獣医学部共同獣医学科が新設

国立の獣医大学「農学部 共同獣医学科」がある岩手大学が2025年4月に獣医学部を新設する方針を発表しました。「岩手大学 獣医学部 共同獣医学科」となりますが、これまでと何が変わり、何が変わらないのか、確認していきましょう。
※2024年3月時点

岩手大学農学部共同獣医学科が獣医学部

岩手大学農学部共同獣医学科の歴史

岩手大学農学部共同獣医学科は、1876年につくられた盛岡師範学校が前身となり、1949年に「農学部」「工学部」「学芸学部」からなる総合大学として設置されました。平成24年度より東京農工大学と共同獣医学科を設置し、今に至ります。
1学年の定員が30人の6年制大学です。岩手県内に広いキャンパスを持ち、農学部エリアには植物園や資料館もあります。獣医学を学べる東北唯一の国立大学です。

参照:岩手大学共同獣医学科HP

岩手大学獣医学部共同獣医学科新設の背景

岩手大学では、令和7年度(2025年度)から、理工学部・農学部の改組ならびに獣医学部の新設を計画していると発表がありました。現在の農学部共同獣医学科を改組し、獣医学部共同獣医学科の新設が予定されています。岩手大学は現在、人文社会科学部と教育学部、理工学部、農学部の4つの学部がありますが、獣医学部が設置されれば、1977年以来およそ50年ぶりの学部新設です。

農学部から新たに獣医学部として独立させることで、さらなる人材育成の環境強化を図ると共に、東日本での獣医師の育成を先導し、牽引する役割を担っていきたいということです。

この背景には、東北地域は畜産や酪農が盛んな一方、牛や豚といった産業動物を診る獣医師が不足しており、産業動物獣医師のニーズが高いこともあると考えられます。
産業動物獣医師は、家畜である牛、馬、羊、豚、鶏などを専門に診療する臨床獣医師のことです。

各県は獣医師確保に向けた取組を進めているものの、県によっては、退職者に応じた職員を確保できないこと等により、現状の産業動物獣医師数は平成32年度(令和2年度)の確保目標数を達成していないところもみられます。

参照:産業動物獣医師確保等の実態把握のための調査結果(PDF)

全国の獣医大学では、オープンキャンパスや動物系イベント等で産業動物獣医師の仕事を受験生に知ってもらう催しをしたり、入学後低学年のカリキュラムに選択科目として産業動物実習を組み込んだり、大学の産業動物用施設を充実させることでその分野の研究室活動の活発化を促したり等、産業動物獣医師のたまごを育てるべく様々な工夫を行っているところです。
産業動物獣医師不足は東北地方に限ったことではなく、全国の獣医大学の課題の一つともいえますが、今回の岩手大学獣医学部新設の理由の一つと考えられます。

また、国立の獣医学部が少ないという背景もみられます。
日本には獣医学を学べる大学、いわゆる獣医大学は、日本には全部で17つあります。国立大学で獣医学部があるのは北海道大学のみでしたので、国立大学の獣医学部新設がニュースになるのも頷けます。

※本計画は、文部科学省と協議中のため、変更となる場合があります。

参照:
獣医学部と獣医学科の違い
【予告】岩手大学学部改組・新設のお知らせ(理工学部・農学部・獣医学部)|国立大学法人 岩手大学
岩手大学が獣医学部新設を計画 再来年4月の発足目指す|NHK 岩手県のニュース
岩手大、獣医学部を新設へ 2025年4月の開設めざす [岩手県]:朝日新聞デジタル

獣医学部になると何が変わるのか変更点

岩手大学は2025年の獣医学部新設の方針とのことですが、受験生にとって気になるのは2025年度の大学入試に変更点はあるのか、または大学入学後、何が変わり何が変らないのかという点かと思います。

カリキュラムが変わる可能性

岩手大学では、もともと東京農工大学との大学間共同教育システムを活用することで、共同獣医学科として獣医学カリキュラムが組まれています。また、獣医学カリキュラムは獣医師国家試験のコアカリキュラムが変更されない限り、大きく変わることはないと推測できるため、獣医学部として独立したとはいえ、入学後の教育システムが大々的に変わることはないと考えられます。

ただ、牛や豚などの産業動物獣医師へのニーズが高く、この分野に力を入れるという目的での獣医学部新設でもあるため、何かしらの変更が加えられる可能性も十分にあります。
具体的には獣医学部共同獣医学科を新設する理由として岩手大学は

  • 産業動物分野、公衆衛生・家畜衛生分野の充実
  • 地域と連携した伴侶動物臨床分野の充実
  • 国際標準を目指した学部カリキュラムの改善
  • 学部での研究者養成プログラムの導入

を掲げており、2025年度以降これに沿った形でカリキュラムが変更されるかもしれません。

入試情報は変らない予定

岩手大学共同獣医学科の定員は、現在の30名から変わらないと発表がありました。定員に変更がない事から偏差値にも大きな変化はないかもしれません。ただ、獣医学部として独立したというニュースにより、受験者が増えないとも言い切れません。

獣医学部新設が正式に決まるのは2024年8月頃、獣医学部として初の学生の受け入れは2025年春の見込みです。キャンパスや入試日程、入試科目、学費に大きな変更はないとみられますが、令和7年度(2025年度)の入試情報は確認必須です。

参照:獣医学部のある大学一覧

岩手大学の獣医学部新設は、獣医大学受験生にとって、入試難易度の懸念を除けば良いことだと思っています。今のところ特別大きな変更はなさそうですが、大学側が獣医学部の教育に、より力を入れようとしてくれていることは明らかだからです。特に国立の獣医大学は、日本の獣医師や獣医学の課題解決に大きな役割を担っているともいえますので、北海道大学に続く国立大学獣医学部に期待したいところです。
関連ページ:
獣医学部のある大学一覧
国立・公立の獣医大学
岩手大学 獣医学部の偏差値、学費、倍率など入試情報

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